ふたりのデートに突然現れた、一斤のハニートースト

※このブログでは、60代の私が、これまでの生き方・日常・身体・性などについて、正直な言葉で綴っています。

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先日行った、リゾート風のホテル。

南国を思わせる部屋に、天蓋のついたベッド。

花の浮かんだお風呂。

普通のホテルのような開放的なフロントも気に入って、彼女と「また来たいね」と話していました。

そこで今回のデートでは、最初からそのホテルへ行くことにしました。

前回とは違って、今回は予約を入れて。

ところが、この予約が思いがけない出来事につながります。

まさか私たちの前に、あんなものが現れるとは思ってもいませんでした。

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12時から利用できるプランがない

このホテルは、プランによって利用開始時間が決まっています。

メインは13時から。

でも彼女が言いました。

「あなたの来る時間では、13時は遅いんじゃない?」

確かにそうです。

せっかくのデートなのだから、できればもう少し早い時間からゆっくりしたい。

そこでホームページを調べてみました。

すると、12時から利用できるプランがありました。

「女子会プラン」

そして、

「推し活プラン」

さすがに私たち二人で女子会プランというわけにはいきません。

でも、推し活プランなら女性限定というわけでもなさそうです。

そもそも私たちは「推し活」なるものをしたことがありません。

でも、12時から入れるのならいいか。

そんな軽い気持ちで、推し活プランを予約することにしました。

「ハニートースト」って何だ?

ところが、予約を進めていくと、よく分からない項目が出てきました。

「ハニートースト」

しかも入力必須です。

どうやら何かを選ばなければ、予約を完了できないようです。

さらに見ていくと、

「人数タイプ、一斤まとめてタイプ」

そんな文字が出てきました。

よく分かりません。

ハニートーストが付いてくるらしい。

その程度にしか考えていませんでした。

仕方がないので、適当に「一斤」を選びました。

このとき私は、「一斤」という言葉の意味を、もう少し真剣に考えるべきだったのかもしれません。

なぜ、わざわざ確認するんだろう

そしてデート当日。

ホテルに到着して、フロントでチェックインの手続きをしました。

するとスタッフの方から確認されました。

「ハニートーストは、一斤タイプでいいんですよね?」

わざわざ念を押されます。

でも、私には何のことやらよく分かりません。

予約したときに一斤を選んだのだから、それでいいのだろう。

「はい」

何の疑問も持たずに答えました。

なぜスタッフの方がわざわざ確認したのか。

その理由を、私はまもなく知ることになります。

「こんこん」

チェックインを済ませ、部屋へ。

彼女は今回も手料理を作ってきてくれました。

カレーとポテトサラダです。

彼女が持ってきた料理をテーブルに並べ、さあ食べようかと準備していたときでした。

こんこん。

ドアをノックする音がします。

「なんだろう?」

私がドアを開けました。

そこには、お盆を持ったスタッフの方が立っています。

そして、そのお盆の上には――。

食パン一斤。

いや、ただの食パンではありません。

一斤のパンを使った巨大なハニートースト。

クリームを下地にして、その上にはバニラアイスがてんこ盛り。

ブルーベリーとストロベリーまでトッピングされています。

さらに、その横にはフライドポテト。

とにかく、すごい存在感です。

彼女がそれを見て、

「えっ?」

私も負けずに、

「えっ?」

二人で固まりました。

これが、あの「一斤」だったのか。

フロントでわざわざ念を押された意味が、ようやく分かりました。

推し活プランだものなぁ

とりあえず、巨大なハニートーストをテーブルへ。

しかし、私たちはそれには目もくれません。

まず食べるのは、彼女が作ってきてくれたカレーとポテトサラダです。

私はカレーを一目散に食べました。

やっぱり彼女の料理はおいしい。

いつものデートなら、食事をしながら話すのは生活のことだったり、仕事のことだったり。

何気ない話をしながら食べます。

でも、この日は違いました。

どうしても目に入るのです。

一斤のハニートーストが。

「これ、どうする?」

「食べられないよね」

話題は自然とハニートーストへ戻ります。

これだけのものが出てくるとは、まったく想像していませんでした。

でも考えてみれば、

「推し活プランだものなぁ」

二人で一応は納得しました。

推しの誕生日を祝ったり、写真を撮ったり、大勢で盛り上がったりするためのものなのでしょう。

ただし、私たちには肝心の「推し」がいません。

目の前にいるのは、長く付き合ってきた彼女と私だけです。

「ん?……おいしい!!」

彼女のカレーとポテトサラダを食べ終わりました。

さて。

まだ目の前には、あのハニートーストが鎮座しています。

せっかく出してもらったのだから、少しくらい食べてみよう。

私は一口食べてみました。

「おいしい」

意外でした。

見た目の迫力に圧倒されていましたが、食べてみるとおいしいのです。

「これ、持って帰って食べてもいいかもよ」

私がそう言うと、彼女は怪訝そうな顔をしました。

こんな大きなものを持って帰るの?

そんな顔です。

ところが、彼女も一口食べました。

「ん?……」

そして、

「おいしい!!」

さっきまでの表情が一変しました。

そして、ひと言。

「カレーの入れ物に入れて持って帰るぅ」

タッパー総動員

そこからは、二人でハニートーストの持ち帰り作戦です。

彼女が料理を入れてきたタッパー。

カレーの容器。

ポテトサラダの容器。

空いたものを総動員しました。

入れられるだけ、ハニートーストを詰めていきます。

さっきまで、

「こんなの食べられないよ」

と圧倒されていたはずなのに。

今度は二人で、

「もう少し入るんじゃない?」

せっせと詰めています。

なんともおかしな光景です。

でも、二人でやっていると、それすら楽しい。

結局、持ってきたタッパーに入るだけ詰めて、彼女が持って帰ることになりました。

デートの思い出は、こんなところにもある

長く付き合っていると、いろいろな場所へ行きます。

旅行にも行きました。

きれいな景色を見たこともあります。

おいしいものも、たくさん食べてきました。

でも、あとになって思い出すのは、案外こういう出来事なのかもしれません。

ドアを開けたら、巨大なハニートーストが現れたこと。

それを見て、

「えっ?」

「えっ?」

と二人で固まったこと。

食べてみたら意外においしくて、最後には二人で一生懸命タッパーに詰めたこと。

予定していたわけでもありません。

ロマンチックな出来事でもありません。

でも、きっと何年か経っても、

「あの一斤のハニートースト、すごかったね」

と二人で笑うのでしょう。

こういう出来事も、私たちのデートの思い出です。

それにしても――。

あれだけ一生懸命タッパーに詰めたハニートースト。

彼女は家に帰ってから、ちゃんと食べたのでしょうか。

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