彼女の声が、BGMになった夜

※このブログでは、60代の私が、これまでの生き方・日常・身体・性などについて、正直な言葉で綴っています。

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以前、
「BGM」という記事を書きました。

ホテルに入ると、
彼女が当たり前のように音楽を選び、
部屋に流し始める。

いつの間にか、
それが彼女の役割になっていました。

けれど、ある日。

久しぶりにそのホテルを訪れると、
小さな張り紙がありました。

「改装のため、部屋内のBGMは廃止となりました」

少し驚きながら部屋に入ると、
たしかに以前とは違っていました。

スピーカーは消え、
枕元の操作盤からも、
BGMのスイッチがなくなっている。

そこにあったのは、
余計なものを削ぎ落とした、
妙にすっきりした空間でした。

少しだけ落ち着かない。

でも、不思議と嫌ではありませんでした。

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音のない部屋

お風呂から上がり、
ベッドに入る。

もう、
音楽を選ぶ必要はありません。

余計なことを考えず、
私は彼女を抱き寄せました。

静かな部屋の中で、
彼女の体温だけが、
いつもよりはっきり伝わってきます。

やがて、
ふたりの営みが始まると、

耳に届くのは、
彼女の息づかい。

そして、
抑えようとしても、
抑えきれない小さな声。

それだけでした。

音楽に包まれることもなく、
何かに誤魔化されることもない。

彼女の反応が、
すべて直接、
身体に届いてくる。

――ああ、これもいい。

そう思いました。

まるで、
彼女の声そのものが、
BGMになったようでした。

何もない静けさ

すべてが終わると、
部屋には再び静けさが戻ってきました。

でも、
以前とは少し違います。

音楽の流れる静けさではない。

本当に、
何もない。

ただ、
ふたりだけがいる空間でした。

肩を寄せ合いながら、
しばらく言葉も出ません。

無理に感想を言い合う必要もなく、
沈黙を埋める必要もない。

「……静かだね」

私がそう言うと、
彼女は小さくうなずきました。

「でも、悪くないね」

その一言だけで、
十分でした。

BGMがあった頃は、
音楽に守られていた気がします。

けれど今は、
何もない静寂の中で、
直接、向き合っている。

年を重ねた恋人には、
こういう静けさのほうが、
合っているのかもしれません。

BGM
ホテルで過ごす時間には、いつの間にか決まった役割分担があります。BGMをセットするのは、私の役目です。彼女と一緒にお風呂…
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