
先日、彼女とけんかをしました。
待ち合わせ場所で、私がつまらない一言を口にしてしまったのです。
日常の些細なことでしたが、今思えば、ずいぶんデリカシーに欠けていました。
今さらながら、反省しきりです。
不機嫌な横顔
その日、彼女は手料理を持ってきてくれていました。
シソの葉を買うため、その足でスーパーへ向かいます。
久しぶりに見る彼女の不機嫌な顔。
返ってくる言葉も、どこか素っ気ない。
いくつになっても、けんかは嫌なものです。
やがて、いつものホテルの部屋へ。
そこは私のお気に入りの部屋。窓の向こうには川が見えます。
彼女は手際よく食事の準備を始めました。
ポットでお湯を沸かし、ごはんをレンジで温める。
私はお風呂にお湯を張り、入浴の準備をする。
いつもの役割分担なのに、どこかぎこちない。
待ち合わせ場所での不用意な発言を悔やみながらも、私は普段どおりに話しかけ続けました。
こんなときは、沈黙のほうが怖いのです。
「おいしいね」のひと言
食事の準備が整い、ふたりで手を合わせます。
「いただきます」
彼女が作ってくれたのは、魚介の炊き込みご飯でした。
一口ほおばると、磯の香りがふわりと口の中に広がります。
「ん、おいしい!」
思わず声に出すと、彼女の顔がふっと緩みました。
「おいしいね」
そのひと言をきっかけに、いつものふたりが戻ってきます。
物価の話。
子どもの頃の思い出。
生い立ちの違い。
話題は尽きません。
食べ終わると、彼女は後片付けを始めました。
私も皿を運び、洗い物をまとめます。
連携プレイのように、あっという間に片付いていく部屋。
嫌なことや面倒なことは、早めに片付ける。
そんな感覚が似ていることも、私たちが長く続いている理由なのかもしれません。
心をほどく時間
その後は、いつものようにお風呂へ。
そして、ふたりだけの時間。
この日は申し訳なさもあって、いつも以上に彼女を丁寧に愛しました。
言葉ではうまく伝えられない気持ちも、触れ合いの中で少しずつほどけていくようでした。
彼女の感じる部分を責め立て、彼女は素直に反応する。
そして、フィニッシュ。
私は身体全体の力が抜け、全体重を預けます。
しばらくして、上半身を起こし、彼女に聞いてみました。
「ご機嫌、直った?」
すると彼女は、不思議そうな顔をして言いました。
「なんのこと? 元々、機嫌はいいよ」
そう言って見せた、幸せそうな笑顔。
男と女。
長く一緒にいると、すれ違うこともあります。
でも、食卓を囲み、他愛のない話をして、そっと触れ合う。
そんな何気ない積み重ねが、少しずつ心を元の場所へ戻してくれるのかもしれません。
ふたりの営みには、感情をリセットする力もある。
そんなことを、あらためて感じた一日でした。

コメント