彼女の車が左折して見えなくなるまで|デートの帰り道

※このブログでは、60代の私が、これまでの生き方・日常・身体・性などについて、正直な言葉で綴っています。

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最近、彼女はデートの待ち合わせ場所まで車でやってきます。

理由のひとつは、私の昼食を持ってきてくれるからです。

デートの日。

彼女とはメールで連絡を取り合います。

「あと○分くらいで着くよ」

彼女が到着する時間に合わせて、私も駐車場へ向かいます。

しばらく待っていると、見慣れた彼女の車が入ってきます。

「あっ、来た」

彼女の車を見つけると、私は両手を振ります。

17年も付き合っているのに、今でもやってしまいます。

彼女からすれば、

「またやってる」

くらいに思っているのかもしれません。

でも、私にとっては楽しみにしていたデートの始まりです。

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駐車場から、ふたりで歩く

彼女が車を停めると、そこからは二人で歩きます。

向かうのは、いつものホテル。

ほんの短い道のりですが、並んで歩きながら、いろいろな話をします。

今日持ってきてくれた昼食のこと。

最近あったこと。

どうでもいいような話。

そんな何気ない時間も、私には楽しいものです。

ホテルに着けば、そこからはふたりだけの時間。

彼女が作ってきてくれた昼食を食べたり、話をしたり。

そして、ふたりでゆっくり過ごします。

かなりラブラブです。

でも不思議なもので、ホテルを出ると、少しずつ空気が変わっていきます。

夢から覚める、というほど大げさなものではありません。

ただ、ふたりだけの時間から、それぞれの日常へ戻る準備が始まるのです。

昔は駅で「じゃあね」

以前、彼女は電車でデートに来ていました。

だから帰りは、ふたりで駅まで歩きました。

改札のところまで行って、

「じゃあね」

彼女が改札の向こうへ消えていく。

私も自分の電車に乗る。

それが、私たちのデートの終わりでした。

今は違います。

彼女は車。

私は電車。

別れる場所が、駅から駐車場に変わりました。

左ウインカーが点滅する

帰りも、ふたりで駐車場まで歩きます。

彼女が車に乗ります。

私は外から見送ります。

「じゃあね」

車がゆっくり動き始めます。

私は、その後ろ姿を目で追います。

赤いテールランプ。

そして、左ウインカーが点滅します。

チカッ。

チカッ。

彼女の車は左へ曲がります。

そして、見えなくなります。

私は、この瞬間が一番つらい。

ほんの少し前まで、すぐそばにいた人です。

笑っていた。

話していた。

触れることもできた。

その彼女が、もういません。

駐車場には私一人。

そんなとき、ふと思います。

なんで私たちは、別々の場所へ帰るんだろう。

答えは分かっています。

それが今の私たちだからです。

それでも、寂しいものは寂しい。

17年付き合っていても、この気持ちはあまり変わりません。

一人で駅へ向かう

彼女の車が見えなくなると、私は駅へ向かって歩き始めます。

行きにも歩いた道です。

でも、同じ道なのに景色が違って見えます。

行きは、これから彼女に会える。

帰りは、もう彼女はいない。

一人で歩きながら、その日のことを思い返します。

彼女が作ってくれた昼食。

何気なく交わした会話。

笑ったこと。

ふたりで過ごした時間。

さっき見送った彼女の車。

歩いているうちに、少しずつ気持ちが落ち着いてきます。

私にとって、この駅までの道は、

ふたりの世界から、現実の世界へ戻るための道

なのかもしれません。

電車が私を現実へ戻す

駅に着き、ホームで電車を待ちます。

やがて電車が入ってきます。

ドアが開く。

大勢の人が降りてきます。

スマートフォンを見ながら歩く人。

家路を急ぐ人。

これからどこかへ向かう人。

たくさんの人が私の前を通り過ぎていきます。

その光景を見ていると、

「ああ、戻ってきたんだな」

と思います。

ほんの少し前まで、彼女とふたりだけの時間を過ごしていたのに。

私は大勢の人の中の一人に戻ります。

少し渋々と。

そして私も電車に乗り、自分の日常へ帰っていきます。

また、両手を振る日まで

考えてみれば、デートの日は同じ駐車場で始まり、同じ駐車場で終わります。

始まりは、彼女の車を見つけて両手を振る私。

終わりは、彼女の車のテールランプを見送る私。

同じ場所なのに、気持ちは正反対です。

会えると、うれしい。

別れると、寂しい。

17年付き合っても、それは変わりません。

彼女の車が左折して見えなくなる。

私は一人で駅へ歩く。

そして、それぞれの生活に戻っていく。

今は、その繰り返しです。

でも、次に彼女の車が駐車場へ入ってきたら――

私はきっと、また両手を振るのでしょう。

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