
生活の形
彼女と付き合うようになって、ふとした瞬間に「もし一緒に住めたら」と考えることがあります。
公園を散歩し、買い物へ行き、自由に旅に出る。
もちろん、愛し合う時間も誰に気兼ねすることなく持てる。
そんな想像を膨らませて彼女に聞いたことがあります。
「もし一緒に暮らしたら、どんな毎日になるかな」
彼女の答えは、「自分の時間は大切にしたいな」というものでした。
私たちには、すでに長年かけて築き上げたそれぞれの生活リズムがあります。
若い頃なら、ふたりで新しい形を作っていく力もあったでしょう。
けれど、還暦を過ぎた今のふたりには、無理に合わせることはかえって窮屈なのかもしれません。
戸籍としがらみ
「籍はどうするか」という話も出ます。
彼女にとって、入籍はひとつの安心材料になるはずです。
しかし彼女は、どこか達観した様子で言いました。
「急に知らない女性が妻の座についたら、お子さんたちは戸惑うし、怒るわよね」
「そうだね。相続の話になれば、間違いなく揉めるだろうな」
私がそう返すと、彼女は複雑な表情を浮かべました。
歳を重ねるほどに、守るべきものやしがらみは増えていく。それが私たちの現実です。
限られた時間だからこそ
今は月に一、二度、会う時間を作っています。
会えば必ず肌を重ね、お互いに深い充足感を得ることができます。
それは、会える時間が限られているからこそ燃え上がる情熱なのかもしれません。
もし日常的に手の届く場所にいたら、これほどまでの高揚感は続かないのかもしれない。
それでも、会えない夜にふと欲しくなることがあります。
私だけでなく、彼女から「昨日、したかったな」とメールが届くこともあります。
そんな時は、すぐにでも飛んでいって抱きしめてあげたくなります。
私たちにとってのセックスは、肉体の満足だけでなく、心の平安を保つための大切な儀式なのです。
「なんとかなる」という言葉
私たちは何度も、この「もしも」の話を繰り返してきました。
不安や課題は尽きませんが、彼女はいつもこう言ってくれます。
「なんとかなるよ。ふたりなら、きっと乗り切っていける」
あとは、私が今の婚姻関係を解消できれば、彼女と新しい人生を歩み出せます。
しかし、現実は厳しく、話し合いや調停を重ねても先が見えない状況が続いています。
「少なくとも、あなたとはずっと会っていたい」
彼女のその言葉に救われつつも、申し訳なさと愛おしさが入り混じった、複雑な想いを抱えています。

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