
私たちが使っているホテルは、いつも同じです。
2棟隣り合わせの一つが我が家。
どちらも試したけど、部屋の造りや受付の対応に差があって、
それ以来、ずっと同じホテル。
「なんで今のホテルになったんだっけ?」
「そうねぇ。たしか隣のホテルは造りが悪かったとか…」
そんな感じで、いつものホテルは我が家として使っています。
家賃
家賃の支払いは、いつも私。
俗にいうホテル代ですけど、
デート代は男が持つもの。
昭和生まれの私としては、小さいですけどダンディズムを持っています。
だから、家賃は私が支払います。
洗面台の排水
月に2、3回。せいぜい4時間使うだけの我が家。
時には洗面台の排水具合が悪いことがあります。
なかなか水が排水されません。
シャワーを浴びた後の歯磨きの時に支障が生じます。
本当の我が家だったら、私が直したり、業者へ修理を依頼します。
でも、ここは仮初め(かりそめ)の我が家。
次の時間帯に使う人がいるかもしれません。
修理依頼は、室内のテーブルに置いてある「お客様からの一言」。
そこに書いて依頼します。
「次にこの部屋になった時には直っていますように…」
そんな思いを込めて、「一言メモ」に願いを託します。
駅への道程
我が家から駅までの道すがらには、思い出が詰まっています。
春
駅へ向かう道路はかなり狭いです。
当然一方通行ですが、10m置きに大きな桜の木が植えてあります。
我が家で、お互いに身も心もさらけ出し、すっきりして道路に出ると、そこには満開の桜。
「願はくは 花の下にて 春死なむ そのきさらぎの望月のころ」西行法師
西行法師の気持ちがよくわかる季節です。
夏
突然の豪雨。
道路の補修工事で排水がうまくできず、道路が水浸しの事もありました。
ふたりでそれぞれ傘をさしながら、水にひたっていない所をさがして、ピョン、ビョンと跳ねていきます。
私が小さい頃、初めて傘を買ってもらったあの日。
わざわざ長靴を履いて、傘さして。
あの頃を思い出します。
秋
我が家は川沿いに建っています。
俗にいう「リバーサイド」です。
秋も深まると、駅への道すがらは徐々に暗闇に染まっていきます。
そんな時、川の草むらから虫の音が聞こえてきます。
「あっ、虫が鳴いてるね」
日本人でよかった。
外国人には、虫の音は雑音にしか聞こえないそうです。
冬
凛とした空気で満たされ、空も凍えそうです。
そんな中、駅へ向かう歩道橋。
階段を上り、歩道橋に行きつくと、そこには月。
満月がくっきりと姿を見せてくれています。
数か月前までは半袖姿だったのに、もうコート無しでは過ごすことはできません。
「綺麗だね」。
ふたり並んで、満月と会話しているようです。
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