
昔の演歌に、ホテルで会って、ホテルで別れる男女を描いた歌があったように思います。
人目を避けて会い、限られた時間だけ愛し合い、それぞれの日常へ帰っていく。
道ならぬ恋というと、そんな少し切ない男女を思い浮かべる人もいるかもしれません。
私たちにも、待ち合わせをして、そのままホテルへ向かう時期が長くありました。
でも、最初からそうだったわけではありません。
そして今は、また少し違うデートをするようになっています。
長く付き合っていると、二人の関係だけでなく、デートの形も変わっていくものなのだと思います。
最初は、公園を歩いていた

彼女と出会ったきっかけは、私の母の介護について相談したことでした。
そこから話をするようになり、やがて相談とは関係なく会うようになりました。
当時、私は現役で働いていました。
彼女も子どもに関わる活動などをしていて、いろいろな話をするために大きな公園へ行くことがありました。
ベンチに座って話す。
二人で歩きながら話す。
お昼を食べて、そのまま別れる日もありました。
今でも覚えているのが、彼女がお弁当を作ってきてくれた日のことです。
季節は春だったと思います。
芝生にシートを広げると、近くにタンポポが咲いていました。
サンドイッチ、鶏の唐揚げ、野菜。
暖かな日差しの中で、彼女のお弁当を食べながら、取りとめのない話をしました。
動物園へ行ったこともあります。
今振り返ると、時間に余裕があったからこそできたデートでした。
仕事が忙しくなり、ホテルが中心になった
やがて私の仕事が忙しくなりました。
役職に就くようになると、一日休暇を取ることが難しくなり、会えるのは半日ほど。
そうなると、公園を歩いて、食事をして、どこかへ出かける余裕はありません。
喫茶店で話すことも考えましたが、私たちが話すのは私的なことばかりです。
誰にも聞かれず、二人だけで話せる場所。
そう考えると、ホテルは都合のよい場所でもありました。
待ち合わせをして、ホテルへ行く。
近況や悩みを話し、そして愛し合う。
いつの間にか、それが二人のデートの基本になっていました。
それでも、私たちはホテルだけでつながっていたわけではありません。
会えない日はメールを交わしてきました。
今では、朝と午後の一日二回。
日常の小さな出来事や気持ちを伝え合うことが、会えない時間をつないでいます。
一泊旅行で、デートの形が変わった

コロナ禍では、三年間会えない時期もありました。
その空白を越えて再会した頃には、二人の生活も変わっていました。
私は以前より時間を作りやすくなり、今度は彼女の仕事に合わせて予定を調整するようになりました。
そんな私たちのデートが大きく変わったのが、昨年の一泊旅行です。
三回、一緒に泊まりました。
最初は少し不安でした。
長い時間一緒にいたら、今まで知らなかった嫌なところが見えるのではないか。
でも、実際には何も変わりませんでした。
昼は観光し、一緒に食事をする。
夜は愛し合い、そのまま二人で眠る。
それまでのデートでは、夕方には別れることがほとんどでした。
だから、一緒に眠り、翌朝も同じ場所にいることが新鮮でした。
そして気づきました。
一泊旅行では、セックスは二人で過ごす長い時間の中の一部分だったのです。
今は、「二人で何かをする」デートへ
旅行を経験してから、デートについて少し考え方が変わりました。
いつものように、会って、話して、触れ合って、愛し合う。
それも大切です。
でも、それとは別に、
二人で同じものを見て、同じものを食べ、同じ時間を過ごすこと。
そんなデートも、もっとあっていいと思うようになりました。
今年の夏には、二人で日本橋を歩きました。
暑い一日でしたが、一緒に街を歩き、食事をし、いろいろなものを見るのは楽しかった。
そして、二人の思い出が一つ増えました。
来年になれば、
「あの暑い日に、日本橋を歩いたよね」
と話すことができます。
振り返ってみると、私たちのデートはずいぶん変わりました。
公園を歩き、お弁当を食べた頃。
半日のホテルデートが中心になった頃。
一泊旅行。
そして今は、街歩きや散策。
どれが一番よかったのかは、決められません。
その時々の二人にできる形で、会ってきたからです。
自由に会える関係ではありません。
時間にも場所にも制約があります。
それでも、その中で二人なりの楽しみ方を見つけてきました。
次は、どこを二人で歩こうか。
そんなことを彼女と話せる今が、私は結構好きなのです。

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