history with 恵(第一章)~法隆寺

※このブログでは、60代の私が、これまでの生き方・日常・身体・性などについて、正直な言葉で綴っています。

スポンサーリンク
40歳代で出会い、そして別れた彼女。──「恵」
「history with 恵」では、彼女との歴史を綴っていきます。

私はデートの場所に法隆寺を指定したことがあります。

付き合い始めて、しばらく経った頃だったと思います。

この日の記憶は、法隆寺駅から始まります。

スポンサーリンク

法隆寺へ

「なんで法隆寺なん?」

恵が関西弁で聞きます。

「俺、法隆寺が好きなんだ」

私は聖徳太子にあこがれを抱いていました。

梅原猛の『隠された十字架』を読んで、一気に興味を持ったのです。

恵とは何度か奈良を歩いていました。

法隆寺へは駅から細い歩道を歩いて向かいます。

途中、小さなコーヒー店がありました。

挽きたての香りが漂っています。

「帰りに寄ろうね」

そう言って、まずは法隆寺へ向かいました。

まだスマートフォンのナビもない時代です。

頼りは地図だけでした。

「向こうじゃない?」

「いや、こっちやん」

恵の関西弁が強くなります。

しばらく歩くと、それらしい建物が見えてきました。

「あれじゃない?」

「そうよ、あれよ。たどり着けたのは私のおかげね」

恵は少し得意そうな顔をしていました。

コーヒー店

帰りに立ち寄ったコーヒー店。

しゃれた店ではありません。

数人でいっぱいになる小さな店でした。

ブラックを二つ注文しました。

豆の香りがとても印象的でした。

やがて運ばれてきたコーヒー。

「おいしいね」

恵が静かに言います。

私も飲みました。

今まで飲んだ中で一番おいしいと思いました。

もしかすると、

恵と一緒だったからかもしれません。

法隆寺駅へ

コーヒーを飲んだあと、駅へ向かいます。

行きは遠く感じた道も、帰りは近く感じるものです。

その時、恵がふいに話し始めました。

「会社の後輩が恋してるんやて。でも手を出してくれへんって悩んでた」

女性同士の会話なのだろうと思いながら聞いていました。

「私はあなたで満たされてるからね。『がんばってね』って言っといたわ」

そう言って、恵は腕を絡めてきました。

うれしくないはずがありません。

暑い日でしたが、

恵の体温は心地よく感じました。

「これからどうする? 俺、難波を通って帰るけど」

「私も行く」

迷いのない返事でした。

難波駅

難波駅で降りるのは初めてでした。

「何か食べようか」

「食べたい」

駅を出て少し迷いました。

「何にする?」

「あそこのビル行ってみる?」

恵はこの街に慣れているようでした。

入ったのは串焼きの店。

「ソース二度付け禁止」

その文化を初めて知りました。

帰路

店を出て駅へ向かう途中も、

恵は腕を絡めてきます。

私も自然に受け入れていました。

恵が言います。

「今すれ違ったおっちゃん、変な目で見てたよ」

40代を過ぎた男女が腕を組んで歩いていれば、

目を引いたのかもしれません。

「いいじゃん、別に」

そう答えると、

恵は少しうれしそうな顔をしました。

法隆寺 コーヒーの香り

「法隆寺」という言葉を耳にするたびに、

恵と飲んだコーヒーを思い出します。

あの大人の香り。

あの時間。

恵は、思い出してくれるだろうか?

恵との歴史のひとつです。

スポンサーリンク

コメント

タイトルとURLをコピーしました