40歳代で出会い、そして別れた彼女。「恵」
「history with 恵」では、彼女との歴史を綴っていきます。

私の手元に、「柳生観光駐車場 駐車券」の半券が残っています。
日付は「17.4.18」です。
そして、「大和十三佛」の御朱印帳も残っています。
この中には「西大寺」はもちろん、「信貴山玉蔵院」「安倍文殊院」などなど13寺院のハンコが押してあります。
恵との出会いは20年以上の前のことで、記憶も薄れてきています。
京都にも行きました。
西本願寺にも行きました。
京都駅前にはラブホがなく、恵が普通のホテルで「休憩」がないか聞いたこともありました。
そして、三十三間堂にも行って、不そんにもキスをした記憶もあります。
想い出のひとつひとつが記憶の断片です。
今日は、柳生の里巡りをお話しして、「history with 恵」シリーズは終えたいと思います。
近鉄奈良駅レンタカー
あの日、私たちは近鉄奈良駅で待ち合わせ、レンタカーを借りました。
道路が狭そうだったので、予約していたのは軽自動車。
カーナビを頼りに、ゆっくりと柳生方面へ走り出しました。
右へ大きくカーブする道、ところどころに開ける山間の景色。
途中で和食を食べた気もしますが、どこの店だったのか、具体的な記憶はもうありません。
幹線道路から右折して、細い道に入ってしまったこともありました。
カーナビの案内に従ったつもりが、まったく違う方向へ進んでいて、引き返すことも難しい。
「こんな道、本当に合ってるの?」
恵が不安そうに言う横顔だけは、なぜか今でもはっきり覚えています。
そんな小さなハプニングも、今思えば楽しい寄り道のひとつでした。
それもこれも断片的な記憶しかありません。
ガソリンスタンドにて~せっかちな恵
恵は、せっかちでした。
柳生の里を巡り終え、レンタカーを返すため、私はガソリンスタンドに入りました。
「ガソリン満タンでお願いします」
給油を終え、幹線道路に出るために右折のタイミングを見計らっていると、横から恵の声が飛んできました。
「今よ、いまっ!」
「分かってるよ……せっかちだなぁ」
恵は本当にせっかちでした。
でも、その“せっかちさ”が、なぜか可愛らしく思えるのです。
せかせかしているのに、どこか不器用で、憎めない。
そんな恵の横顔が、今も鮮やかに脳裏に浮かびます。
記憶の断片
私の手元には、紅葉した枯れ葉が一枚だけ残っています。
どこで拾ったのか、まったく覚えていません。
恵との思い出は、鮮明に焼き付いている場面もあります。
しかし、一場面一場面は、木の葉のようにひらひらと散らばり、断片となって残っているものがほとんどです。
もし、恵がいたら、ひとつひとつ想い出を解きほぐすことができるだろうに。
そんな思いでいっぱいです。
恵は今、どこで暮らしているのだろう。
ふとした瞬間に、私のことを思い出してくれているだろうか。
そんな想いを胸に、私はそっとこのシリーズを終えることにします。

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