
顔を見るだけでいい―― そう思っていたはずの、再開デートでした。
会えなかった三年間。
私たちはそれぞれ、体調の不調を抱え、思うように生きられない時間を過ごしていました。
だからこそ、 目の前にいる彼女が、ただそれだけで、たまらなく愛おしい。
胸の奥から、熱が静かにこみ上げてきます。
浴室から先に出たのは、いつものように私でした。
昔から変わらない、ふたりだけの小さな約束です。
忘れていたBGM
ベッドに腰を下ろし、裸のまま彼女を待つ。
肌に残る湯の余韻が、妙に生々しい。
私にとって忘れかけていた感覚でした。
やがて、ガウンを羽織った彼女が戻ってきました。
その姿を見た瞬間、 懐かしさと欲情が、一気に混ざり合います。
すぐにでも唇を重ねたかった。
彼女は、慣れた手つきでベッド脇のBGMボタンを押しました。
そうだ。 この音がなければ、始まらないんだ。
ふたりの流儀でした。
それは、”BGMに包まれてのメイク・ラブ”。
クラシックの時もあれば、 オルゴールの時もありました。
その日は、優しいオルゴールでした。
セカンドバージン
軽やかな音色の中、 ゆっくりと、久しぶりのキスを交わします。
思いもよらなかった、彼女との再会。
唇の感触を確かめるように、 時間をかけて、何度も、深く。
私は、彼女の体を思い出すように、
そして、思い出させるように、丁寧に触れていきました。
三年間、会っていなかったのです。
彼女の体も、きっと同じだけ、間を空けている。
「…入るかな」
思わず漏れた独り言。
彼女の反応を確かめるように、 太ももの内側から、ゆっくりと触れていくと、
すでに、十分すぎるほど、しっとりと濡れていました。
彼女にそっと脚を閉じてもらい、 秘所の合わせ目に、上から自分のものを当てます。
まだ、入れない。
素股のまま、 熱と熱をこすり合わせる。
「…これなら、痛くないわ」
入っていないのに、 彼女の声は、もう甘く崩れ始めていました。
「あっ…ああっ…」
ゆっくり、 ただ、なぞるように動かしているだけなのに――
不意に、 抵抗なく、ツルンと、中へ。
「あっ…入っちゃった」
私がそう言うと、彼女は短く息を吐き、
「…うん。入った」
そのまま、動かず、 ただ抱き合います。
互いの鼓動と、 体の奥でつながっている感覚を、 確かめるように。
「今日は…ここまでにしようか」
本音でした。 会えただけで、十分だった。
久しぶりの彼女に、無理をさせたくなかった。
けれど――
「…感じてきたの」
彼女が、小さく言います。
「最後まで…できそう」
「本当に、大丈夫?」
「…うん。して」
最後まで
正常位に体勢を変え、
彼女の表情を、呼吸を、そして、体の反応を確かめながら、 少しずつ、奥へ。
「…大丈夫?」
「うん…大丈夫…。 あっ…アア…」
声が、確実に変わっていきます。
急がない。
ただ、ゆっくり。
三年分の空白を、 一つずつ埋めるように。
「ああ…イキそう…」
彼女の体が、きゅっと締まり、 そのまま、波が抜けていきました。
それを感じた瞬間、 私も、もう抑えがきかない。
やさしく動かしていた腰を、強く、深く。
「…イクよ…」
短く息を詰めて、 そのまま、すべてを吐き出しました。
そして、彼女の上に、そっと体を預ける。
重さも、熱も、 すべてを受け止めてくれました。
しばらくは、そのまま動けず、 オルゴールの音だけが、部屋に流れていました。
喪失後
久しぶりの合体だったからこそ、
彼女の体が心配になりました。
その日のうちに、メールを送ります。
「…大丈夫だった?」
「うん。今のところは、大丈夫そう」
ただ、 後日、彼女はこうも言いました。
翌日は、入り口が、少しヒリヒリしていた、と。
それでも――
コロナ禍を越えて、 私たちは、また、こうしてつながったのです。

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