唯一の機能は「快感を得る」こと

人の身体には、
生命の維持や子孫の継承のために用意された器官がいくつもあります。

呼吸、排泄、授乳、性交——そのすべてが機能を宿し、役割を果たしています。

ところが、その体系にあって“ひとつだけ例外のように存在する器官”があります。

女性の身体に備わる、小さな真珠のような突起。

クリトリスです。

クリトリスは「快感を得るためだけに存在する器官」だと言われています。

排泄にも、妊娠にも、授乳にも関わりません。

ただひとつ、
快感という感覚のためだけに存在しています。

私は長いあいだ、その事実を知らずにいました。

若いころの私にとって、セックスは勢いと熱量で形づくられるもので、
女性の身体の精妙な仕組みに目を向ける余裕がありませんでした。

けれど、年齢を重ね、
「女性の身体はどう感じ、どう応えるのか」という問いに興味を持つようになってから、

クリトリスの世界は一気に奥行きを持ち始めました。


“突起”はほんの入り口にすぎない

クリトリスというと、
多くの人は表に見える米粒ほどの突起部分を思い浮かべるかもしれません。

実際には、その部分は“クリトリスの一部”にすぎません。

解剖図を見ると、クリトリスは表からは見えない部分で大きく枝分かれし、

左右に伸びる脚(クルーラ)と海綿体に包まれながら、
大陰唇や小陰唇の内側、さらには膣前壁の近くにまで広がっています。

まるで、地上に顔を出しているのは小さな芽だけで、
その下には大きな根が張り巡らされている植物のようです。

突起部分——いわゆる「陰核亀頭」は、もっとも鋭敏な場所ではありますが、
そこだけがクリトリスの本質ではない、
そう思い知らされます。


触れたときの反応は、身体全体への“連鎖”

クリトリスの構造を知ったうえで女性の反応を見ると、
表層の反応だけで語れない奥行きを感じます。

息が止まるような深い呼吸の変化、
腰や太ももがわずかに震える仕草、
あるいは肩越しに伝わる、一段落ちた体温の波。

あれらは、単に一点への刺激によるものではなく、
女性の体内に張り巡らされた神経の広がりが
連鎖的に反応しているからなのだと気づきます。

「快感だけのために存在する器官」とは、
なんと静かで、なんと強い存在なのだろうと感じます。


“女性を知る”とは、突起を探すことではなく

クリトリスを研究し続けていると、
女性の身体は単に“どこが感じるか”の地図ではないのだと気づきます。

むしろ、
どんな間合いで触れられたいのか、
どんな呼吸で寄り添われたいのか、
どう安心したときに身体が開くのか。

その全体をひとつの“風景”として感じ取る必要があるのだと思うようになりました。

突起を探すことではなく、
女性の身体の中に広がる静かな回路を理解しようとすること。
その先に、ようやくクリトリスという器官の意味が浮かび上がってきます。


快感は目的ではなく、扉である

クリトリスの役割はただひとつ——快感をもたらすこと。

けれど、その快感は決して“終着点”ではありません。

女性が心と身体をひらいた瞬間に見せる変化、
相手を信じて身を委ねるときの静かな深さ。

その扉を開く鍵として、クリトリスという器官が存在しているのだと思います。

私は最近、彼女の反応を見ながら、
表に見える小さな亀頭だけでなく、
その奥に広がる“見えないクリトリス”まで意識するようになりました。

女性の身体を知ることは、
相手の内側にある景色を知ることでもあります。

そしてその景色は、年齢を重ねた今だからこそ、
より深く、より静かに、美しく感じられるのです。

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