
私たちの逢瀬は、ラブホテルです。
でも、私たちはそこを「ラブホテル」とは呼びません。
いつの頃からか、自然と「マンション」と呼ぶようになりました。
理由は簡単です。
そこは、ただ身体を重ねる場所ではなく、
私たちがふたりで過ごすための部屋だからです。
年中無休の、私たちの居場所
年末だろうが、年始だろうが。
夜中でも、昼間でも。
晴れていても、雨が降っていても。
私たちのマンションは、いつもそこにあります。
まるで、
「いつでもおいで」
と静かに待ってくれているような場所です。
世の中が慌ただしく動いている時でも、
この扉を閉めた瞬間、外の時間は止まります。
きっと年が変わる瞬間に、
肌を寄せ合いながら
「今年、最初に会うのはあなたね」
なんて言葉を交わすカップルもいるのでしょう。
そう思うと、
この場所は、恋人たちをそっと応援してくれる
不思議な力を持っている気がします。
積み重ねてきた時間
思い返せば、
人生の中で、いくつものラブホテルを使ってきました。
若い頃は、
会えば、とにかく求め合っていました。
時間も、お金も、気持ちも、
すべてをそこに注ぎ込んでいたような時代です。
景色が良いところ。
設備が整っているところ。
話題性のあるところ。
ホテル選びそのものが、
ひとつのデートのようでもありました。
使いづらい駐車場に苦笑いしたり、
前の人の名残に戸惑って部屋を変えたり。
今となっては、そんな記憶も
懐かしい思い出の一部です。
今の私たちにとって
でも今の私たちにとって、
マンションは「選び歩く場所」ではありません。
いつもの場所。
いつもの部屋。
いつもの空気。
身体を重ね、
快楽と同時に癒やしを求め、
何も飾らず、ただ繋がり合える空間。
そこには、
気取った演出もなにもありません。
あるのは、
安心と、温もりと、
「ここに戻ってきた」という感覚だけです。
部屋の数だけ、物語がある
ラブホテルには、
部屋の数だけ、使うカップルの数だけ、
物語があります。
その中のひとつが、
私たちのマンション。
誰にも見えず、
誰にも知られず、
でも確かに存在している、
ふたりだけの場所。
私たちはそのマンションで、
静かに愛をつむいでいます。

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