
ベッドに仰向けに横たえていた彼女の両腕は、頭の上でタオルで縛られていた。
まるで万歳をしているようだ。
彼女の上に乗っている彼は、激しく腰を振り、フィニッシュへ昇りつめていく途中だった。
彼女と彼はセックスの真っ最中だ。
「自由に感じていいんだよ。
うっ、締まる」
「あんっ、あんっ、あんっ…」
彼女は、正常位での規則正しい動きに合わせて歓喜の声をあげていた。
しかし、彼女は心の中でつぶやいた。
「S(サド)としての誇りが許せない…」
彼女はS(サド)だった。
普段から、ふとした瞬間にサドの血にスイッチが入り、日常の会話でも口調が厳しくなることがあった。
そして、セックスの最中は完全にサドの本性がむき出しになり、自らの昇天よりも彼をイカせることに精魂を傾けていた。
それに悦びを感じるのはサドという性癖ゆえであった。
成熟したテクニック
二人が愛し合うのは、郊外にある隠れ家的なホテルであった。
午前中に合流し、お昼から4,5時間滞在し、愛し合う。
既に50歳は過ぎているカップルだが、4回戦5回戦はざらであった。
彼らのセックスは彼が主導権を握っているようで、実は彼女が握っていた。
熟年カップルらしくお互いにテクニックは成熟し、彼の愛撫で彼女は大量の汗をかくようになっていた。
そして最初は正常位で交わり、お互いの愛情を確認し、その後は彼女が体を起こし、騎乗位へと移っていくのが常であった。
騎乗位は彼女が感じるというより、主体的に腰を振ることで彼をイカせることに心血を注いでいた。
「自由に感じていいんだよ」
彼は、彼女の攻撃的な腰の動きを、彼女が快楽を感じている証拠だととらえていた。
「簡単に出すのはもったいない」
彼は彼女の快感を持続させようと、オーガズムに達するのをこらえていた。
しかし、彼女は彼が達するまで、必死に腰を動かすのだ。
前後に、円を描くように、そして上下に…。
バリュエーションは様々だ。
なにしろ、彼をイカせるのが、彼女の最大の悦びなのだから。
戦いの間の休憩
彼女の騎乗位での攻撃も限界がくる。
足腰の筋肉を最大限に使う。
限界がくると、ひとつの戦を終了し、休憩をとる。
疲れが癒えると、また戦いが始まる。
彼女の攻撃は多彩だ。
騎乗位が最大の武器だとすれば、フェラチオも重要な武器だ。
最初はおちょぼ口で彼のモノを上下にしゃぶる。
そして、舌先で尿道の入り口をつつく。
男の性感帯である亀頭部分の根っこを丁寧に愛撫する。
これだけで彼のモノは膨張が最大になり、まさに「怒張」という表現のように雄々しい大きさになる。
S(サド)カップルの戦い
S(サド)カップルの戦いは、彼女にいたぶられた彼の射精で終わる。
彼が主導権を握り、支配しているつもりでも、実は彼女が主導権を握っているのだ。
彼の大きな勘違いからカップルのセックスは成り立っている。
彼が散々いたぶられた結果、最後はすべての精を彼女の奥深く放出させられるのだ。
私は、この話を聞いたとき、S(サド)を自認する彼が息も絶え絶えに果ててしまった顔と、吉瀬美智子似の彼女のニンマリと勝ち誇った顔を想像してしまった。

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