
長年付き合ったカップルであっても、相手の心と体というものは、実に奥が深いものだと感じます。
若い頃の私は、どうにもせっかちでした。
「さあ、どうだ」とばかりに、すぐに結果を求めてしまっていたのです。
しかし、この歳になってようやく、一つの真理に気づきました。
女性の体は、まさに「鍋料理」のようなものなのです。
「まだかしら?」
あの日、ベッドでゆっくりと過ごしていた時のことです。
私は彼女の背中に手を置き、ゆっくりと撫で始めました。
指先で輪を描くように、静かに、静かに。
「あら、今日は静かね」
彼女は私の腕の中で、くすりと笑いました。
「焦っちゃいけないよ。いいものは、じっくり時間をかけて煮込むものだからね」
そう言って、私は彼女の肌を、手のひらで温めるように愛撫しました。
「ふふ、また変な例えを持ち出して」
彼女はそう笑いながらも、その声はどこか穏やかに、甘く響いていました。
私の手の動きに合わせて、彼女の呼吸がわずかに深くなっていくのがわかります。
弱火で、じわじわと
若い頃なら、ここで一気に火力を上げていたことでしょう。
相手の反応を確かめることに必死になって。
ですが、今は違います。
はやる気持ちを抑え、彼女の小さな変化を愛おしむように、ただ時間をかけます。
「ここ、気持ちいいかい?」
そう囁きながら、柔らかな部分を、執拗なほどゆっくりとなぞります。
「ん…もう…」
彼女はそう言いながらも、体の力が抜け、私に身を委ねてくるのが伝わります。
指の腹でそっと触れると、彼女の体が微かに震えたのが指先から伝わってきました。
「ゆっくり温めていこう」
そう伝えると、彼女は私の首に腕を回し、顔を寄せてきました。
湯気が立ち上る頃
鍋料理は、弱火でじっくり煮込むからこそ、芯まで熱が通り、味わい深くなります。
ぐつぐつと煮える音、立ち上る湯気。
彼女の体からも、心地よい熱が伝わってきます。
準備が整ったのを見計らい、優しく、語りかけるようにさらに触れてみました。
彼女の肩が小さく揺れ、シーツが微かに擦れる音が響きます。
その微かな反応が、言葉以上に彼女の心の開きを教えてくれました。
「…お上手ね」
私の腕の中で、彼女は少し熱を帯びた吐息とともに、そう囁いてくれました。
私はもう、言葉を重ねることはしません。
彼女という名の「鍋」が、最高の状態に仕上がるまで。 ただひたすらに、丹念に、煮込んでいく時間を楽しむだけです。
この「待つ」という時間こそが、大人の贅沢なのかもしれません。
ただ、じっくりと。
私は「鍋」が煮え立つのを待つばかりです。

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