Mr.サマータイム

"ミスター・サマータイム
さがさないで あの頃の私を"

"あの夏の日 つぐなえる 何かが欲しい
待ち伏せた 誘惑に
誘われて 思わず あなたを忘れたの"

"たよりなく 若い日々
ただ ひとつの愛にそむいてしまったの"

夏の誘惑

“ミスター・サマータイム
さがさないで あの頃の私を”

若い頃はただ明るいメロディとして流していたこのフレーズが、

今では胸の奥に静かに落ちて、消えない余韻を残します。

人生のどこかで、
「さがさないで」と言いたくなるような自分がいた。

永遠を誓った相手がいるのに、他の恋に溺れかけた自分。溺れた自分。

誰にも言えない選択をした自分。

取り返しのつかない想いに揺れた自分。

すべてが夏のいたずらだったのでしょうか。

思い出したくないけど、忘れたくない。

この歌詞の切ない思いが、

この歳になって、ようやく分かるようになりました。


心のすき間

“あの夏の日 つぐなえる 何かが欲しい
待ち伏せた 誘惑に
誘われて 思わず あなたを忘れたの”

この一節も、歳を重ねた今だからこそ、
痛いほど胸に響きます。

今まで意識しなくても降り積もっていた、心の底のやるせない気持ち。

それが夏の日の誘惑に解き放たれてしまった。

永遠を誓った恋を忘れて、他の恋に浸ってしまった。

“心のすき間を埋める恋”。

恋に落ちた瞬間、
心のどこかにできた小さなすき間を、
ほんの少しでも温めてほしかったのかもしれません。

誘惑から必死に逃れようともがく自分。でも、最後は誘惑の恋へと落ちていった。

「つぐなえる何かが欲しい」
つぐないたいけど、決してつぐなえるはずがない。

でも、あの切ない恋をしたという事実。あの思いは忘れることができないものです。

たよりなく若い日々

“たよりなく 若い日々
ただ ひとつの愛にそむいてしまったの”

愛にそむいた──
この言葉は人によって重さが違うけれど、
大切なものがありながらも“自分の気持ちに正直になってしまった”。

あの頃は未熟で、
守るべきものよりも、求めるものを優先してしまった。

若さは時に暴走します。

私にはよく分かります。

私のふたつの恋も、あの時期、あの思いだったから、私に舞い降りたのかもしれません。


大人の恋は、記憶の中で鮮やかに蘇る

ひとときの大人の恋は、
時間が経てば経つほど、
色を失うどころか、むしろ鮮やかに蘇ります。

あの夏の日の太陽の強さも、
ホテルの部屋に差し込んだ淡い光も、

ふとした瞬間に匂いまで思い出してしまいます。

忘れたいのに、忘れられない。
後悔しているのに、思い出すと温かくなる。


心の羅針盤

真夏の太陽がそうさせたのかもしれません。

それは、ひとりの女性として輝かせる時間だったのかもしれません。

その恋は甘いだけではないし、かと言って、苦しいだけでもありません。

その瞬間は確実に輝いていた。

償おうとしても償いきれない、許されない恋。

忘れたいけど、忘れたくない。

すべては強い日差しで心の羅針盤が狂ってしまったのかもしれません。

夏の日の切ない恋を想像すると、私の心までが溶けてしまいそうな気がします。

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