
体の相性──その言葉を、私は長いあいだ他人事のように思っていました。
結婚前のセックスは、胸に触れ、挿入して、果てる。
ただそれだけで満足していたのです。
25歳で結婚し、その後の相手は配偶者だけになりました。
しかし、配偶者は愛撫を苦手とし、いつも早く挿入を望んできました。
私が少しずつ「性の楽しみ方」を知り始めても、それを試そうとするとくすぐったがるばかりでした。
膣に射精すれば子どもはできる。
性とはそういうものだ──
世にいう「性の楽しみ方」は想像上のもの。
私はそう思い込んで過ごしていました。
道ならぬ恋
「体の相性」というものを強く意識したのは、今の彼女との関係が始まってからです。
その前の、大阪の彼女との関係でも、確かに何かを感じ始めてはいました。
けれど、それはまだ“入口”にすぎませんでした。
激しく求め合い、ただ深く果てるだけで満足していた時期──
いま思えば、それは「道ならぬ恋」がもたらす昂りだったのかもしれません。
本当のセックス
今の彼女とは、もう15年の付き合いになります。
初めて抱いた時の感触は、今も鮮明に残っています。
服越しに抱き寄せた瞬間、腕の中で柔らかく形を変える身体。
ぎゅっと抱きしめるだけで、呼吸が乱れていく。
ベッドに倒れ込んだ彼女は、私の指先に背中をわずかに反らせ、
触れるたびに体温を上げていきました。
挿入の瞬間、彼女はシーツを握りしめ、息をのみ、
そのまま私を奥へ奥へと受け入れていく。
その時、私は初めて
「身体がひとつになる」
という言葉の意味を知ったのです。
体の相性
体の相性をどう感じるかは、人によって違うと思います。
私がそれを確信したのは、彼女を最初に抱きしめた瞬間でした。
服の上からなのに、身体がぴたりと重なるような、説明のできない“居心地の良さ”。
そして、キスをした時。
彼女はとろけるように体重を預け、力が抜けていきました。
そのとき、「ああ、この人とは合うんだ」と直感しました。
後で話すと、彼女も同じ感覚を覚えていたようです。
私に触れられると、考えるより先に身体が反応した、と。
セックスの前には必ず肌を触れ合う。
その一瞬で、すべてが決まってしまう。
私は今も、そう思っています。

コメント