BGM

ホテルでのお互いの役割は決まっています。

BGMセットは私の役割です。

お風呂で、彼女とスキンシップしながらコミュニケーションを取ります。

そして、私が先にお風呂を出て、ベッドでBGMのセットをします。

これが私たちのお作法でした。

ん?彼女がBGMセット?

この日は、お風呂を出るタイミングが一緒になりました。

彼女がBGMを選んでいます。

「ん?珍しいな」と思いましたが、好みのBGMでもあるのかな?と思い、気にも留めませんでした。

曲は、何を選んだのか忘れてしまいました。

セックスの最中は、BGMが全く耳に入ってきません。

入ってくるのは、彼女の呼吸と悦びのかすかな声だけです。

初めてBGMが耳に入ってくるのは、ふたりとも満足した後のピロートークのときです。

お互いに身体を寄せ合って、ぬくもりを感じます。

セックスの感想とか、頭の中に浮かんだことをそのまま口にします。

ふと、会話が途切れた時、静寂の中にBGMが流れてきます。

「静かだね」と私。

「この静かな時って貴重だわね」と彼女。

そう、貴重な時間です。

この温かさのチャージがなければ、私は仮面夫婦という現実へ立ち戻ることはできなかった。

それほど貴重な時間です。

彼女がBGMをセットした理由

その後、BGMの件が判明しました。

彼女は以前、子どもに係わる仕事をしていました。

セックスをしている最中に、童謡が流れたそうです。

童謡を聞いたら、セックスをしながらも、子どもたちの顔が目に浮かんだそうです。

突然、頭の引き出しから引き出されるものですね。

それ以来、BGM選びは彼女の役割となっています。

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