たかが真珠、されど真珠

今から50年ほど前のことです。

当時、エロ本は自動販売機でも売られていました。

大学生だった私は、早朝、人目につかないように小銭を握りしめ、いそいそと買いに行ったものです。

今のようにインターネットはなく、性に関する情報は紙媒体から仕入れるしかありませんでした。

私が手に取っていた雑誌は、いわゆる庶民的なもの、言葉を換えれば少しアンダーグラウンドな世界をのぞかせる媒体でした。

“真珠”を埋め込む

その中で、時折目にしたのが、男性器に“真珠”を埋め込むという話題です。

挿入のたびに突起が刺激となり、女性が声を上げて悦ぶ

——そんな説明が添えられ、「2個入っている」「いや、俺は3個だ」といった体験談めいた文章が並んでいました。

経験も知識も乏しかった当時の私には、現実感はなくとも、強烈に刺激的な内容でした。

雑誌には漫画も掲載され、男性が腰を打ちつけるたびに、女性が歓喜の声を上げる。

まるで自分がその場にいるかのように、想像を膨らませたものです。

後年、彼女に冗談めかして聞いたことがあります。

「俺、真珠を入れたらどうかな?」

「えっ、真珠!?」

驚いた表情でした。

「昔、雑誌で読んだことがあってさ」

「ええ……痛そう」

今ではさまざまな経験を重ね、確かに人によっては痛みになるだろう、と理解できます。

しかし大学生だった私は、「セックス=挿入」だと信じ込んでいました。

キスや愛撫によって女性は全身で感じ、その延長線上に挿入がある

——そんな当たり前のことすら知らず、男女ともに挿入そのもので快楽を得るものだと勘違いしていたのです。

たかが真珠、されど真珠

現在でも、男性器にシリコンを埋め込む施術は存在します。

私が目にしていたのは“真珠”でしたが、今では医療用シリコンが主流のようです。

なぜ、そこまでして埋め込むのか。

「彼女をもっと感じさせたい」 「自分の武器に、もうひと工夫加えたい」

そんな思いが、身体改造への関心を呼び起こすことがあるのでしょう。

一部の研究では、適切に配置されたシリコンボールが膣壁やGスポット付近に刺激を与える可能性が示唆されているともいわれています。

しかし、すべての女性にとって“快感”とは限りません。

医療現場では、パートナーを喜ばせたいという動機で陰茎インプラントを希望する男性がいる一方、

実際には「性交時に痛みが出た」「相手が苦痛を訴える」として、抜去を希望するケースも少なくないそうです。

特に未産婦の女性では異物感や痛みが出やすく、経産婦では比較的受け入れられやすい傾向があるとも聞きます。

結局のところ、すべてを“イチモツ”に委ねるのではなく、

雰囲気や安心感、そして丁寧な前戯といたわりの積み重ねが、大きな快感へとつながっていくのだと思います。

シリコンボールを埋めるかどうかは、個人の価値観次第です。

コンプレックスを和らげる一方で、今後の性生活を大きく左右するデメリットも確かに存在します。

大学生の頃に読んだ、あの雑誌記事。

たかが真珠、されど真珠——。

今振り返ると、そう言いたくなる話です。

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