history with 恵(第三章)~新大阪駅

40歳代で出会い、そして別れた彼女。「恵」
「history with 恵」では、彼女との歴史を綴っていきます。

その日は、恵が新大阪駅まで見送りに来てくれました。

デートする所によって、見送ってくれる場所が違います。

新大阪駅

東京まで3時間かかるので、私が新大阪で新幹線に乗るのは、夕方5時くらいでした。

この時間は人の往来も激しくなります。

新大阪駅は旅行をする人や出張のサラリーマンで混雑します。

その中で、恵と私は新幹線の出発を待ちます。

「恵、もう帰っていいよ。」

「ううん、見送りたいの」

私が気を使っているのを見透かされたようです。

ふたりとも、特に言葉は交わしません。

ただ、ベンチに座っているだけ。

髪の毛の交換

恵が突然、言い出しました。

「ねえ、髪の毛を交換しない?」

想像もしていないことです。

交換といわれても、人の行き交う中では恥ずかしくてできません。

「ねえ、良いやろ。いつも側にいたいから」

私はいつもペンシルケースを持ち歩いており、ハサミは中にしまってあります。

「ん~~、分かった。ここでは人がたくさんいるから、あそこの隅に行こう」

私は待合室を出た電話ボックスの方を指さしました。

カバンを持って、電話ボックスへと向かいます。

電話ボックスで、ペンシルケースからハサミを取り出して、恵に渡しました。

恵は「少しだけもらうよ」。

そう言うと、私の髪の毛を少し切りました。

「うふっ、うれしい」恵は言うと、髪の毛を財布の中にしまいます。

今度は、私の番です。

「恵、少し横むいて」

私も恵の髪を少し切りました。

私も財布の中にしまいます。

「これで、ふたり、いつも一緒だね」恵が笑います。

いつも一緒

東京に到着すると恵からメールが来ました。

「髪の毛をもらって、すごくうれしい。どうもありがとう。
 いつも一緒だね。あなただと思って大切にするね」

私も財布のチャックの中に大切にしまっていました。

そして、なかなか会えない時やケンカをした時は、髪の毛をながめていました。

あれから20年以上たちました。

髪の毛はすでにありません。

恵から別れを告げられてから、しばらくしてから家の近くの多摩川に流しました。

想いを振り切るためです。

恵の髪の毛はありませんが、恵との懐かしい想い出はいつまでも心の中に残っています。

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