
40歳代で出会い、そして別れた彼女。「恵」
「history with 恵」では、彼女との歴史を綴っていきます。
その日は、恵が新大阪駅まで見送りに来てくれました。
デートする所によって、見送ってくれる場所が違います。
新大阪駅
東京まで3時間かかるので、私が新大阪で新幹線に乗るのは、夕方5時くらいでした。
この時間は人の往来も激しくなります。
新大阪駅は旅行をする人や出張のサラリーマンで混雑します。
その中で、恵と私は新幹線の出発を待ちます。
「恵、もう帰っていいよ。」
「ううん、見送りたいの」
私が気を使っているのを見透かされたようです。
ふたりとも、特に言葉は交わしません。
ただ、ベンチに座っているだけ。
髪の毛の交換
恵が突然、言い出しました。
「ねえ、髪の毛を交換しない?」
想像もしていないことです。
交換といわれても、人の行き交う中では恥ずかしくてできません。
「ねえ、良いやろ。いつも側にいたいから」
私はいつもペンシルケースを持ち歩いており、ハサミは中にしまってあります。
「ん~~、分かった。ここでは人がたくさんいるから、あそこの隅に行こう」
私は待合室を出た電話ボックスの方を指さしました。
カバンを持って、電話ボックスへと向かいます。
電話ボックスで、ペンシルケースからハサミを取り出して、恵に渡しました。
恵は「少しだけもらうよ」。
そう言うと、私の髪の毛を少し切りました。
「うふっ、うれしい」恵は言うと、髪の毛を財布の中にしまいます。
今度は、私の番です。
「恵、少し横むいて」
私も恵の髪を少し切りました。
私も財布の中にしまいます。
「これで、ふたり、いつも一緒だね」恵が笑います。
いつも一緒
東京に到着すると恵からメールが来ました。
「髪の毛をもらって、すごくうれしい。どうもありがとう。
いつも一緒だね。あなただと思って大切にするね」
私も財布のチャックの中に大切にしまっていました。
そして、なかなか会えない時やケンカをした時は、髪の毛をながめていました。
あれから20年以上たちました。
髪の毛はすでにありません。
恵から別れを告げられてから、しばらくしてから家の近くの多摩川に流しました。
想いを振り切るためです。
恵の髪の毛はありませんが、恵との懐かしい想い出はいつまでも心の中に残っています。
コメント