
恵が欲しい
恵とは、その後もメールのやり取りが続きました。
奈良での楽しかった思い出も話題に上り、やり取りは、次第にメールというより会話に近いものになっていきます。
そんな中で、恵への想いに変化が生まれていました。
—恵が欲しい。
—もっと近くで、つながりたい。
男の性なのかもしれません。
好きになった女性を、より深く感じたい。
そんな気持ちが、はっきりと胸に芽生えていたのです。
恵とのメール。
「また会いたいね」
私の問いかけに、恵はこう返しました。
「会いたいね。でも、もう泊まりの旅行は無理」
「じゃあ、日帰りで行けそうな場所はどう? 東京より、少し先で」
「日帰りなら、何とかなりそうだけど…」
「名古屋は?」
「名古屋なら、行けるかなぁ」
こうして、名古屋での待ち合わせが決まりました。
時期は夏。
暑い季節です。
名古屋城や犬山城など、いくつか案は浮かびましたが、
真夏の屋外観光は正直きつそうでした。
「直接、どこか涼しいところで休もうか…」
そんな気持ちが、自然と頭をよぎります。
結ばれる
当日を迎えました。
名古屋駅で待ち合わせ。
行き先について、詳しい話はしていませんでした。
「こっちに行ってみようか」
「暑いし、少し休まない?」
少し間があって、恵は言いました。
「…いいよ」
後で聞くと、
少し驚きはしたものの、拒む気持ちはなかったそうです。
部屋に入り、シャワーを浴びて、静かな時間が流れました。
詳しいことは、あまり覚えていません。
ただ、恵の言葉だけが、心に残っています。
「久しぶりだから、ちょっと緊張するね」
その言葉と、寄り添った温もり。
言葉少なに、確かめ合うような時間があり、
気がつくと、心も身体も、すっかりひとつになっていました。
長い間忘れていた感覚でした。
名古屋駅への道すがら
ホテルを出て、名古屋駅へ向かう道すがら。
恵がぽつりと言いました。
「私ね、占い師さんによく見てもらうんだ。
何度も、東京の人と一緒になるって言われてるの」
私と腕を組みながら、そう言います。
—一緒になる?
一瞬、そんな言葉が頭をよぎりました。
けれどその時は、
恵と特別な時間を共有できたことへの安堵と喜びで、胸がいっぱいでした。
とりあえず、微笑みで返しましたが、
恵はすでに、未来を意識し始めていたのかもしれません。
何はともあれ、
この日は、初めて身も心も近づいた、忘れられない一日となりました。

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