結ばれた日

恵が欲しい

恵とは奈良での旅行以来、メールのやり取りが続いていました。

思い出話も自然と交わされ、いつしかメールというより、まるで日常的な会話のようになっていきました。

そんなやり取りを続けるうちに、私は恵への想いが静かに、しかし確かに深まっていることに気づきました。

もっと近づきたい。

しっかり向き合いたい。

――恵と結ばれたい。

自分でも戸惑うほど強い感情でした。

あるときのメールで、私は「また会いたいね」と伝えました。

恵は少し間を置いて「会いたいね。でも、もう泊まりの旅行は無理かな」と返してきました。

「だったら、東京寄りで日帰りの場所にしない?」

提案すると、恵は「日帰りなら何とかなるかも」と応えてくれました。

「名古屋は?」
と尋ねると、「名古屋なら行けるかな」と言ってくれ、次の再会の場所が決まりました。

結ばれた日

季節は夏。

観光には少し酷な暑さです。

名古屋城や犬山にも足を延ばせるかもしれないと思いながらも、

暑さを思うと、別の過ごし方に意識が向かいます。

そして当日を迎えました。

名古屋駅で合流し、私は「こっちに行ってみようか」と声をかけました。

恵には特別な予定を伝えていませんでしたが、事前に落ち着いて休めそうな場所を探しておいたのです。

「暑いし、ここで少し休もうか」

そう言うと、恵は少し驚いた様子を見せながらも「いいよ」と微笑んでくれました。

その日、私たちは静かな時間を共有しました。

ただ一緒に過ごし、お互いの想いを確かめ合う、穏やかで温かなひとときでした。

名古屋駅への道すがら

帰り道、名古屋駅へ向かって歩きながら、恵がふと話し始めました。

「私ね、よく占い師さんに見てもらうんだよ。

 何度も、『東京の人と一緒になる』って言われててね。」

恵は私の腕にそっと手を添えながら、照れたように笑いました。

私は「一緒になる、か…」と心の中でつぶやきながらも、

恵が自分との未来を思い描いてくれているのだと感じ、胸が熱くなりました。

その日は、私にとって、そして恵にとっても、身も心もひとつに寄り添った特別な一日になりました。

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