
駅で待ち合わせて、ホテルへ向かう。
それが、私たちのいつもの流れです。
待ち合わせ
ブル、ブル、ブルル…。
スマホが震え、彼女からのメッセージが届きました。
「駅に着いたよ。そっちに向かうね」
待ち合わせは駅構内の本屋さん。
けれど私は落ち着かず、彼女が出てくる改札のほうへ向かってしまいます。
彼女は私を見つけると、少し照れたように笑いました。
前回のデートから、まだ二週間も経っていないのに、
「お久しぶり」
そんな言葉を交わして、ふたりで小さく笑います。
ホテルへの道すがら
歩きながら、メールでは書ききれなかった近況を話します。
ホテルの入口脇にある駐車場を見て、ふたり同時に足を止めました。
「車、多いね」
正月明けは利用が多い、と聞いたことを思い出します。
「お部屋、あるかな」
少し心配しながらパネルを見ると、
「あった」
空いていたのは、ひと部屋だけでした。
何かの貼り紙がありましたが、そのときは気に留める余裕もありません。
とにかく、入れることがうれしかったのです。
部屋に入って
部屋は暖房がよく効いていて、外の寒さが嘘のようでした。
私はお湯を準備し、彼女は飲み物を用意します。
この時間が、もう落ち着くのです。
まずは“作戦会議”。
毎日やり取りはしていても、
顔を見て、声で話さないと伝わらないことがあります。
今日の話題は、
これから行く予定の梅見のこと、
そして、それぞれの現実の生活。
十五年前、付き合い始めた頃に訪れた場所の話になると、
自然と昔話が始まります。
「あそこ、覚えてる?」
「お弁当、作ってくれたよね」
記憶違いも混ざりながら、笑い合う時間。
気がつくと、二時間ほど経っていました。
(今日は、このまま話だけでもいいかもしれない)
そう思いながら、
「お風呂、どうする?」
と聞くと、彼女は即答でした。
「入る」
その一言に、少しだけ胸が温かくなります。
小さな誤算
部屋に戻り、静かな時間が流れます。
いつもとは少し違う空気。
それも悪くありません。
ただ、ひとつだけ想定外だったのは、
設備の都合で、いつもの雰囲気が整わなかったこと。
BGM装置が壊れていました。
「だから、最後まで残ってたんだね」
そう言って、ふたりで苦笑い。
それでも、
この時間を共有できていること自体が、ありがたいのです。
距離が縮まる時間
ベッドに並び、言葉少なに、自然と距離が縮まっていきます。
触れ合うというより、
気配を確かめ合うような感覚。
今日は、少しだけ熱量が高かった。
それは、どちらからともなく伝わってきました。
お互いに、どこまで行くかを探り合いながら、
同時に引き寄せられていくような時間。
結果的に、
私は少し先に力を使い切ってしまいました。
余韻の中で
同じ掛布団の中。
しばらく黙っていると、彼女がぽつりと言いました。
「5年は若返ったんじゃない?」
「俺が?」
「そう」
「そんなに?」
「うん。久しぶりに、勢いがあった」
冗談めかした言葉でしたが、
どこか本音も混ざっていた気がします。
振り返ると、
駆け引きでは互角だったかもしれません。
でも、最後に余韻を楽しんでいたのは――
きっと、彼女のほう。
彼女は、
たまに訪れる“少し激しい時間”が、どうやら嫌いではないようです。

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