
私はお酒が好きです。
彼女はお酒は全然ダメ。いわゆる下戸です。
差しつ差されつは、したことがないのです。
でも一度だけ、彼女がビールを飲んだことがあります。
誕生日に昼飲み
付き合い始めの頃です。
場所はホテル。
私の誕生日は冬なので、シートを広げてのピクニックはできません。
彼女が手作りのビーフストロガノフを作ってきてくれました。
そして、350㎖のビールを3缶買ってきてくれました。
私はその頃はまだ、彼女が下戸なのを知りませんでした。
「誕生日おめでとう。かんぱ~い!」
「ぷふぁ~」昼飲みのビールは最高です。
特に彼女と飲むビールは格別。
彼女の手作りの料理を食べながら、お酒も進みます。
酔うごとに、会話もはずみます。
お互いの家庭のこと、仕事のこと、趣味のこと。
私は2缶目のビールに入ります。
彼女をフト見ると、だるそうな目になっています。
「ん?酔っ払った?」
「大丈夫?」私が声をかけると、「うん、大丈夫」と彼女が答えます。
でも、あきらかに大丈夫ではなさそうです。
ソファーに座っている姿も斜めになっています。
「お酒、弱いんだぁ」私は初めて悟りました。
そのうち、彼女はソファーに身体を横たえてしまいました。
「ごめんね。ちょっと横になるね…」
彼女は力のない声で断ります。
女性はアルコールが得意ではない人も多いので仕方ないです。
そのうち、彼女の「ス~、ス~」という寝息が聞こえ始めました。
「おっ、寝ちゃった」
私は彼女の寝顔を肴に、ひとり昼飲みです。
ふたり向き合ってのお酒もおいしいですが、彼女の寝息をBGMにビールを飲むのもおつなものです。
私、寝てた?
彼女は一時間は眠っていたでしょうか。
「ん?私、寝てた?」
いよいよ彼女のご起床です。
「うん、気持ちよさそうだったよ」
彼女は恥ずかしそうに微笑みます。
そして、「う~ん」と背伸びをします。
「飲めないんなら、そう言えばいいのにぃ」と私。
「あなたの誕生日だもの。お祝いしたかったんだぁ」
お祝いしたい一心で、手料理を作って、飲めないビールも買ってきてくれたんでしょうね。
私にとっては最高のプレゼントです。
大人なふたりなので、いつもなら愛の交わりをするところですが、私にはこのプレゼントで心は満たされています。
「外を散歩しようか」私が聞きます。
「えっ、しなくていいの?」彼女が答えます。
彼女はまだ頭がもうろうとしていて、セックスどころではなかったと思います。
「うん。ちょっと公園を歩いて酔いをさまそうよ」
これが彼女から最高のプレゼントをもらった記念日です。
去年の夏のデート
去年(2024年)の夏は猛暑でした。
最近は毎年、猛暑を更新しているようです。
デートでの待ち合わせ時間の直前にメールが入りました。
「私はおにぎり買っていくけど、ビールを買っていこうか?」
もちろん、私が飲むビールです。
彼女のメールを見た時、彼女の「ビールでノックアウト事件」を思い出しました。
せっかくの彼女の優しいお気遣いなので、ビール1缶をお願いしました。
ホテルでビールを飲みながら、彼女に聞いてみました。
「ビールでダウンしたの覚えてる?」
もちろん彼女は覚えていました。
ふたりで思い出して大笑いです。
15年付き合うと、ふたりの歴史は積みあがっています。
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