
彼女に一度だけ、ある「道具」を使ったことがあります。
ネットで見つけた、手のひらサイズのバイブレーターです。
それは、特定のポイントを同時に刺激するような形をしたものでした。
いつものように、唇から胸までを羽毛で撫でるような「フェザータッチ」で愛撫した後、それを取り出しました。
当時はまだ、互いの呼吸を合わせるような丁寧な時間を意識する前で、愛撫もどこか形式的だった頃のことです。
振動の始まり
使うことは事前に話してあったので、彼女も心の準備はできていたようでした。
「使うよ」と声をかけると、彼女は小さく頷きました。
道具をそっとあてがうと、吸い込まれるように彼女の体へと受け入れられていきました。
彼女にとって、こうした道具は初めてのこと。 …ここにも、彼女の「初めて」がありました。
「アン…」
慣れない感覚に、彼女が小さな声を漏らします。
私は彼女に太ももを閉じさせ、そのまま首筋や脇の下へと愛撫を続けました。
しばらくすると、彼女が足をモジモジさせ始めます。
肌への刺激が、彼女をより敏感にさせ始めているようでした。
いよいよ、スイッチを入れる時です。
本体からは有線のリモコンが伸びていて、彼女の閉じられた腿の間から這い出しているように見えました。
まずは最小の強さから始めてみます。
スイッチをオンにすると、
彼女が小さく呻きました。
私は彼女の肌に触れながら、少しずつ振動を大きくしていきます。
彼女の声が次第に高まっていきます。
かなり感じているその様子を見て、私自身も限界まで昂ぶっていくのが分かりました。
下の刺激は道具に任せ、私は彼女を抱きしめ、慈しむことに専念しました。
彼女の声は、何かを必死に耐えているような響きに変わっていきます。
「ウッ、イキそう…」
突然、彼女の体からふっと力が抜けました。
彼女が、いただきに達した証拠です。
私はスイッチを切り、震えていたそれを取り出しました。
丁寧に体を整えてあげてから、そっと寄り添い、険しくなっていた彼女の眉間を優しくなでてあげました。
そして髪に触れながら、静かに唇を重ねました。
機械よりも、確かなもの
「いっちゃったね」
私がそう語りかけると、少し間をおいて、彼女が口を開きました。
「機械的で、気持ちよかった。…でも、やっぱり、あなたが良い」
その言葉を聞いた瞬間、たまらない愛おしさが込み上げてきました。
「ありがとう」
私は急に彼女が欲しくなり、
彼女を抱きしめるようにして、ゆっくりと自身を沈めていきました。
彼女は私を全身で受け止め、私の背中を強く抱きしめます。
最初はゆっくりと、
しかし抑えきれない衝動のままに、二人の熱は高まっていきました。
一突きするたびに、彼女も「ハッ、ハッ…」と短い息を漏らします。
いつもなら彼女のペースに合わせるのですが、今日はもう、我慢ができませんでした。
「イクよ…」 許しを請うように言うと、
「いいよ。私も…」 彼女が息も絶え絶えに応えてくれました。
二人の息が合い、同時に果てました。
静かな幸せ
その後しばらく、私は彼女に全体重を預けたまま、繋がった余韻の中にいました。
彼女が私をキュッと締め上げます。
身体がピクンと動くと、彼女が「アン!」と反応し、それに釣られて私の方もまた反応してしまいます。
まるで連鎖反応のような、幸せな時間が続きました。
しばらくして、私はそっと彼女から離れました。
静かな中での、ふたりの吐息。
愛し合う者しか味わえない時間です。
それ以来、私は一度も道具を使っていません。
彼女も一度試したことで、もう満足したようです。
機械的な規則正しい振動よりも、私の不規則な動きと体温の方が、彼女には心地よいみたいです。
私は…彼女の心を機械に奪われずに済んだようで、少しホッとしています。

コメント