
それは彼女と出会った最初の頃。
彼女に会う日が近づくと、
胸の奥がそわそわと落ち着かなくなります。
理性が小さく囁きます。
「行かないほうがいい。深入りしてはいけない。」
その声を押し切ってしまうのは、
彼女に触れたときに、自分がどれほど変わってしまうのかを知っているからです。
確実に解き放たれる自分
初めて抱き寄せた時、
彼女の静かな呼吸が、
腕の中でゆっくりと熱を帯びていきました。
その変化を感じた瞬間、男としての何かが静かに、しかし確実に解き放たれていきました。
世間は「男は欲望で動く」と言いがちですが、実際はそう単純ではありません。
ただの欲なら、どこにでもあります。
けれど、
“心まで震わせてくれる女性”は、人生でほんの数人しか現れません。
彼女は、その数人のうちのひとりでした。
キスをしたとき、
唇の柔らかさよりも、触れた瞬間にふっと震える気配に、私は惹かれました。
男は細かな反応に弱いのです。
理性が働くより先に、身体が覚えてしまいます。
指先が首筋に触れたとき、
彼女は少しだけ身をよじりました。
拒むわけでもなく、あからさまに求めるわけでもなく、その中間にある曖昧な応え方。
それが男の心を揺さぶります。
「今日は……やめたほうがいいよね」
そう言ったのは彼女でした。
けれど、その声の奥に潜む「それでも会いたい」が、痛いほど伝わってきます。
男は、女性が思う以上に、こうした“温度の変化”を敏感に読み取っています。
その温度こそが、罪悪感すら静かに上書きしてしまうのです。
リスクを負ってでも会いたくなる
ホテルの部屋に入ったとき、
彼女がゆっくりとコートを脱ぐ姿を見ただけで、
胸の奥が熱を帯びていくのを感じました。
その所作は、どんな前戯よりも刺激的でした。
抱き寄せた瞬間、胸の形ではなく、
背中に回した腕の下で深く吸い込まれた“ひと息”が、すべてを決めます。
理性が溶けていき、ただひとつの覚悟だけが静かに残ります。
――もう引き返せない。
彼女の声が耳元でほどけていくたびに、
「この人のすべてを守っていく」と思えてしまいます。
そこには、単なる関係では生まれない感情があります。
男がリスクを負ってでも会いたくなる女性とは――
触れた瞬間に、自分が生き返るのを実感させてくれる女性です。
年齢も立場も役職も、名前さえも意味を失い、
残るのは欲ではなく、
「この人だけは特別だ」という確かな感覚だけ。
だからこそ、会いに行ってしまうのです。
どれほど危ういと分かっていても、
彼女を抱きしめたときのあの“生き返る感覚”には、
すべてのリスクが甘く、美しい意味を帯びてしまいます。

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