
先日、彼女と思い出をたどるうちに、 ふとした疑問に行き着きました。
「私たちは、なぜ“そういう関係”になったのだろう?」
初めて肌を重ねた場所も、その時の光景も、 今でも驚くほど鮮明に覚えています。
それなのに、何をきっかけに 境界線を越えることになったのか。
その点だけが、どうしても思い出せないのです。
もう15年も前のことですからね(笑)。
当時の私たちは、互いに家庭の中で 行き場のない孤独を抱えていました。
それでも守るべきもののために、 今は自分が耐えるしかない――。
そんな厳しい現実を共有する、 いわば「戦友」のような関係でした。
惹かれ合う男女が、自然な流れで 肌の温もりを求めた……と言えばそれまでですが、
50歳の私と、45歳の彼女。 それは決して、軽い決断ではありませんでした。
静かな覚悟
最初の時は、何度かデートを重ねたあとでした。
「あの駅で待ち合わせ、あのホテルへ入る」
事前にそう言葉を交わし、 互いに同じ覚悟を持ってその日を迎えました。
ネットで調べ、準備を進めたのは私でしたが、 心の奥では彼女の方が、 この一歩に積極的だったようにも思います。
本人に聞いても、きっと 微笑んで交わされるだけでしょうが(笑)。
…いや、「聞けない」というのが 正確なところかもしれません。
抱擁の温度
部屋に入ると、すぐに唇を重ねました。
彼女にとって、それは結婚以来、 初めて夫以外と交わす出来事でした。
抱きかかえるような、深いキス。
彼女の身体から、ふっと力が抜けていくのが伝わります。
彼女の呼吸は荒く、少し過呼吸気味でした。
立ったままでは落ち着かず、いったんソファに腰を下ろします。
私は最後の一線を越える前に、確認をしました。
「…本当に、いいの?」
自分自身の鼓動が、耳元でうるさく鳴っていました。
「うん」
彼女は小さく、けれど確かに頷きました。
愛撫の原点
シャワーは別々に入りました。
お互いに、裸体を見せるのが初めてだったからです。
先に浴びた私が、ベッドで彼女を待ちます。
やがて、バスローブをまとった彼女が傍らに立ちました。
ためらう彼女に、そっと声をかけます。
「おいで」
私が広げた布団の隙間に、彼女が滑り込んできます。
ゆっくりとバスローブを脱がせると、 服の上からでは分からなかった 彼女の柔らかな曲線が露わになりました。
今の私たちの睦み合いは、 私が彼女の全身を慈しむところから始まります。
その原点は、この夜にありました。
あごの下、耳たぶ、そして脇の下へ…。 丁寧に唇を這わせていく。
「あぁ…」
彼女が、小さく声を漏らします。
「ここが彼女の心地よい場所なんだ」という発見は、 今も私の脳裏に、はっきりと刻まれています。
重なり合った記憶
今の形は、年月をかけて 二人の工夫が積み重なったものです。
当時はまだ、私のテクニックも、 彼女の心構えも、そこまで整ってはいませんでした。
けれど、彼女は驚くほど敏感でした。
バレエを嗜んでいたという背筋は、 私の愛撫に応えるように美しい弧を描きます。
言葉にならない吐息が部屋に満ち、 私の昂ぶりも限界に達していました。
「彼女と、ひとつになりたい」
ただその一念に突き動かされていました。 余裕なんて、どこにもありません。
彼女がそっと心と身体を開いてくれた瞬間。
ゆっくりと、深く結ばれたとき。
彼女の腕が私の背に回り、強くしがみついてきた感覚。
部屋に響くのは、二人の荒い息遣いと、 重なり合う肌の音だけです。
そして最後にすべてを解き放ち、 彼女の中に自分を刻みつけたこと。
その確かな感触だけが、 15年経った今も色褪せない記憶として残っています。
翌日のメール
翌日、彼女から一通のメールが届きました。
「昨日はありがとうございました。 今日は少し身体が痛いです。 でも、それが結ばれた証拠なんだと実感しています」
さらに、こう続いていました。
「昨日、私は女としての幸せを感じました。 事前に『イカせられないかも』って言っていたけれど、 ちゃんと幸せでしたよ」
前日、私は緊張のあまり 「満足させられないかもしれない」と送っていました。
余裕のなかった自分を顧みて、 心からホッと胸を撫で下ろしました。
メールの最後は、こんな言葉で結ばれていました。
「今度は、一緒にお風呂に入ろうね」
15年前の、忘れられない出来事。 今の私たちに続く、大切なはじまりの物語です。

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